#0085 韓国現代製鉄工場完全閉鎖!受注ゼロで涙の決断!
2005年5月に商業生産を開始してから15年目にして完全閉鎖となりました。
(参考)ソウル経済 2020/06/26
唐津製鉄所内にある施設で、これで韓国製鉄業界から電気炉熱延工場が消えることとなりました。
電気炉熱延工場とは、くず鉄を電気炉で熔解し、それで鋼板を作る設備ということです。
現代製鉄ではパイプや建設用の鉄板などを作っていたとのことです。
最近ではくず鉄価格が数年間にわたって上昇が続いていて、収益性も悪化していたとのことです。
韓国大手のKG東武製鉄やポスコは収益性悪化を理由に2014年にすでに熱延工場を閉鎖していました。
現代製鉄はすでに労使間交渉はすませ、関連設備の売却と人員の配置転換に合意しています。
現代製鉄は当初から2つのシナリオを検討していたとのことで、最善シナリオは7月からの稼働再開だったようです。
しかし6月に入ってから受注が全くないことから、予め検討に入れていた完全閉鎖を決定したとしています。
この電気炉熱延工場の年間生産能力は工場全体の4%ほどと、それほど大きな割合を占めていなかったということです。
鉄鋼業界は感染症の影響で世界的に需要が急減しています。
世界的なメーカーが減産を行い、高炉の稼働を相次いで停止するなど深刻な状況が続いています。
編集所感
鉄鋼会社は買収や合併が繰り返されていて、日本企業ですらその歴史を追うとややこしいです。
沿革を見てみると、併合時代に始まり、カネボウの買収、戦後の国営化、さらには民営化。
その後も何度も経営危機に陥り、様々なところに買われ、現代グループに買われたあともIMFでまたしても危機に陥るなど、苦難の歴史が見て取れます。
名前も何度も変わっていますし、IMF以降も合併を繰り返して現在ポスコに続く韓国第2位の地位を確立しています。
皆さんご想像が付くと思いますが、全産業が停滞する中で、原材料となる鉄鋼の需要も急減し、生産調整に入っている状況です。
自動車の生産減が業界としては特に大きいでしょう。
その他建設、機械、部品、造船などなど、鉄鋼を扱う業界は多岐に渡ります。
韓国の場合は造船受注が好調なので、それに救われている部分はあるでしょうね。一方で自動車は惨憺たる状況です。
今回の工場閉鎖は合理的なように見えますね。雇用も維持し続けるようですし。
稼働停止すれば費用削減になり、売却すれば一時的に現金が入る。世界的な需要減の中で生き残るには現実的な選択でしょう。
今、韓国の鉄鋼業界も例に漏れず危機的状況に陥っています。
問題の一つは政府が基幹産業安定基金の支援対象外とされてしまったことです。
数十年間韓国経済を牽引してきた鉄鋼業界が見捨てられようとしているわけです。
ちょっと韓国政府の考えは分かりませんが、全ての産業を救えるわけではないですからね。
韓国鉄鋼メーカーは2月くらいに合理化を図るため積極的な設備投資を行っていました。
平たく言えば戦略ミスですが、誰もが第3四半期には回復傾向に向かうだろうと考えていた頃ですから・・・。
これに関しては誰かを責めることはできないでしょう。
こうして需要が急減し、全世界的に在庫量が増大する中、中国鉄鋼メーカーは狂ったように増産して価格下落を引き起こしています。
5年ほど前、中国の鉄鋼メーカーが力を増してきた時期も中国で異常に在庫が増えて価格が大幅下落して状況を悪化させた事態を思い起こしますね。
中国は何を考えているんでしょうね。こうすることで世界各国の中小鉄鋼メーカーを潰そうとでも思っているのでしょうか・・・。
国内需要を見込んでなのか何なのか。ちょっと狙いが分かりません。
前回はこうした過剰生産による価格安によって中国鉄鋼メーカー自身も再編を繰り返す羽目になったわけですから・・・。
今回もこうした中国の増産のおかげで鉄鉱石の価格が上昇しているようで、これがまた業界全体にとって悪影響となっているようです。
今や中国が世界の鉄鋼の半分を占めているようで、世界各国に安価な製品を輸出しているようです。
世界にといっても東南アジアからは反ダンピング税で実質上市場から追い出され、南米やアフリカに安い製品を売りつけているようですが・・・。
(参考)ロイター 2018/06/07
日本は今やインドに抜かれて3位。今後は製鉄所の閉鎖や合理化も計画されているようです。
日本と韓国は意外なことに鉄鋼の輸出入が多いです。日本の輸出量の方が多いですね。
品目を調べようと思いましたが、統計庁の輸出統計は相変わらず見にくいのでよくわかりません。品目番号が載ってないし。
一時期は日本が自動車向けの超ハイテンと呼ばれる軽量で強度の高い製品を輸出していましたが、韓国の国内生産も増えていると思われます。
調べてみたところ、いわゆる超ハイテンと呼ばれる製品を韓国からも大量に輸入しているようで、それとは別の品目を輸出しているようです。
どういう棲み分けかはちょっとよく分かりませんね。輸入は恐らく価格の問題でということだと思いますが。
日本の鉄鋼メーカーは高付加価値製品にシフトして生き残りをかけています。
4月までは前年同月比で4ヶ月連続で輸出増だったそうで。よくわかりませんね・・・。
やはり超ハイテンでも技術格差があり、優位性を維持しているようです。
詳細まではわかりませんが、韓国の自動車メーカーも一部では日本製を使わざるを得ないのでしょう。
(参考)業界動向 鉄鋼業界
ただ国内需要は長期的に減少していて、これが鉄鋼業界を苦しめている一因となっているようです。
兎にも角にも世界経済の回復が望まれますが、世界各地で感染の拡大が収まる兆候が見られず、再燃している地域もあるというのが大きな問題ですね。
お〆め
環境問題はそれとは別で、汚染物質を大量に放出していたということで。
(参考)京郷新聞 2019/06/04
鉄鋼需要が多いので、自然と鉄鋼産業も成長したというわけです。基本的には国内需要に比例しますから。