#0096 韓国造船、安い日本鉄鋼輸入で冷え込む韓国鉄鋼業界
全体としては原料である鉄鉱石価格が高止まりを続ける中、中国メーカーの増産によって鉄鋼価格が低下した状態が続いていて、下半期も苦しい状況が予想されます。
中国国内のインフラ投資への期待感や、大雨災害による需要増加が見込まれますが、それでも価格は横ばいになると見られているようです。
第2四半期で底を打ったという声も聞かれますが、第3四半期以降も回復の見通しは立っていないようです。
調査によっては鉄鋼業界の第3四半期はさらに悪化するという見通しも出てきています。
一方ではやや楽観的な見方も出ていて、これからの回復に向けて韓国最大手のポスコは高炉3つを再稼働したと発表しました。イーデイリー 2020/07/10
これは回復の兆しが見える前に先取りをすることで、優位性を確保するためとみられています。
韓国の鉄鋼業界の先行き不安な原因として、日本からの鉄鋼輸入増加が挙げられます。
3月に東京五輪の延期が決まると、特需を狙って生産された鉄鋼の供給が過剰となり、価格が下落して韓国国内に多く輸入されるようになったようです。
低価格高品質製品を必要とする韓国造船業界がこれに目を付け、韓国製より1割ほど安価な日本製を大量に買い入れたようです。アジア経済 2020/07/13
これによってある造船会社では日本製鉄鋼の比率が90%を越えたとも報じられています。
また、造船企業が韓国鉄鋼メーカーに対し、日本製と同じ価格を要求され、第3四半期の受注を断念する事態に陥ったと報じられています。
韓国政府は感染症に関連する雇用支援事業から鉄鋼業を外すなど、苦境の鉄鋼業界に対する積極的な支援は見られず、年内は赤字が続くものと予測されています。
編集所感
輸入の方は5ヶ月連続で減少となっていて、中でも韓国からの減少幅が非常に大きく、韓国鉄鋼業界へのダメージとなっていると見受けられますね。
一方で輸入の方は台湾が3月以降増加傾向が続いているようです。価格差の問題なのでしょうか・・・。
輸出入統計はまだ5月実績までしか発表されていませんが、中国が6月に輸入を大幅に増やしたということで、日本の鉄鋼業界にとって明るいニュースであればよいですが・・・。日本鉄鋼連盟 輸出入実績概況
これに関して韓国の鉄鋼業界では明るい話題はないですね。中国の輸入量増加の恩恵をいくらか受けているはずですが、価格競争で敗れてしまったのかもしれません。
ただ、日本のメーカーについても安売りをしているわけですから、利益はそれほど大きくないわけです。受注減、生産減による苦境が続いています。
韓国メーカーは製造コスト割れしたダンピングとしていますが、これは恐らく計算方法の問題で、現在急騰している鉄鉱石の価格で算出したのではないかと思います。
こういう場合、韓国の人件費の方が高ければ、それで計算してダンピングだと主張することもできますね。
第3四半期の受注ということで造船メーカー向けに算出したものだとすればおかしな計算ではないですが、出荷時点ではコスト割れはしていなかったと思いますね。
そうやってダンピング製品が輸入されていると政府に訴えることで何らかの行動を促しているのかもしれません。
以前の報道では、原材料の高騰が続いているので、造船や自動車メーカーとの価格交渉を行うということでしたが、日本製のために上手くいっていないということのようです。
こういう時に国内の産業間で双方の生き残りのために協力し合うというのはないようですね。
今回このような事態ですので、そんな悠長なことはやっていられないということなのでしょう。世知辛いですけど。
ここに政府がテコ入れすれば、また競争を阻害する行為として訴えられかねないということかもしれませんが、感染症による影響ということで抜け道的な方策はないのでしょうか。
韓国政府は鉄鋼業はいざとなれば資産売却で切り抜けられる余裕があると見ているのか、とにかく冷たいですね。
政府としては様々な考えあってのことと思いますが、鉄鋼業界からすれば納得がいかないでしょうね。
韓国鉄鋼業界は反ダンピング訴訟を起こせと声を上げるかもしれませんね。
ここも政府とのせめぎ合いがあるかと思いますが、造船を生かすためにはダンピングを見逃さなければならなくて、でもそうすれば国内の鉄鋼産業が苦しむというジレンマ。
先ほどの支援事業指定と同じで、今のところ韓国政府は鉄鋼業界に我慢を求めているようですね。可哀想に・・・。
鉄鋼メーカーが体力があるといっても雇用維持も容易ではないと思いますので、何かしら手を打たねばと思います。
先日現代製鉄が一つの工場を永久閉鎖したように、政府は閉じて売ればいいだろうと考えているのでしょうか。
造船はあれだけ巨額を投入して大宇造船海洋を救ったのに、鉄鋼には随分と冷たいですね。
本当に死にそうになるまで救わないつもりのようです。
まあ、税金の使い道ですからこれはあくまで韓国政府はそういう方針を貫くということにしておきましょう。
感染症も一旦収まっても第二波到来と言われてどこの国も落ち着かない状況が続いていますね。
ただでさえ経済は苦しい状況なので、感染症の恐怖に屈することなく、各国が立ち上がっていくしかないでしょう。
お〆め
そして・・・
自分だけじゃないと思ってはいましたけど、実際に他にもいると分かってホッとしました。
その一例が語呂合わせだったり、イメージと結びつけてだったり、何となく分かります。